『番頭劇場』・・・・・いわゆる番頭が勝手に妄想する、事実無根のフィクションがこのように呼ばれています。
学生時代は寝具メーカーで長年バイトをしていました。
シーツや毛布やパジャマから枕まで幅広く扱っていました。
その中でも枕博士と呼ばれる重鎮がいて眠りに関する研究を必死にやっていました。
いつの世にか、夢見の良くなる枕が開発されるようになるはずだと真顔で私に話してくれました。
その会社はのちに売却されましたが、枕の部門だけが独立していまだに百貨店などに出品しています。

~夢くらい、味方してほしい~
やはり去年と比べると最近、睡眠が浅い。
いや、正確には「現実が浅い」から、夢くらい深くあってほしいと思っている。
そんなある日、昔の先輩と会って教えてもらったのが
「いい夢が見られる!低反発・高密度・理想の枕」
レビューも上々だそうだ。
「元カノが夢に出てきて謝ってくれました♡」とか書いてある。
それ、欲しかったやつ。
思わずサンプル品としてモニターレヴューすると約束して頂戴した。
ついでに枕カバーも“ヒノキの香りで安眠効果”とかいうやつにして、準備万端。
そしてその夜。
枕に頭をうずめ、一瞬で眠りに落ちた。
──夢の中。
なぜか若返った私。
夕焼けの土手道。
向かいから歩いてくるのは、かつて好きだった彼女。
風が優しく吹く。雰囲気は、完璧だった。
「やっと…話せる気がする」
そんなセリフまで口にして、いいムードになりかけた、その瞬間。
彼女、突然こう言った。
「ごめん、やっぱ無理」
いや待て待て待て。
まだ、俺は何も言ってないぞ⁉
“いい夢が見られる枕”で、なんでまたフラれてるんだ!
目が覚めたら、枕の端がびしょ濡れ。
寝汗かと思ったら、涙だった。
レビューに追記しようかと思った。
**「高密度でよく眠れますが、夢のシナリオは選べません」**って。