幸せを垣間見る時

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番頭の最も得意とする世代のお友達・・・・テル子さんです。
御歳78歳。神奈川県のとある海沿いの働き者。

毎年夏になると、ウニの成育具合など個人的な海洋調査のために毎週の様に通っていましたが、今年もいつもの場所で座って元気に待っていました。

車を停めて、しばし歓談・・・・今朝はどの辺で何が獲れたか?を教えてもらいながら、なんだかんだ20分ほど話し込んでしまいます。
この年代の方々と会話を進めていくとほぼ間違いなく登場する話題があります・・・・
そうです、嫁の悪口です。息子の悪口よりも圧倒的な割合で嫁の悪口が出てきます。自分が腹を痛めて生んだ子と所詮他人との差が歴然する場面です。

しかし、テル子さんは例外で一度も嫁の悪口を口にしたことがありません。

彼女の毎日は・・・・季節を問わず毎朝4時に起床し、まずは丘の上の畑へ向かい農作業。
夏場は集荷する野菜と小売する野菜の準備をします。

8時前には海水浴に訪れるお客さんの車を自分の敷地内の駐車場(1日500円)に誘導すべく通りの定位置に陣取り待機します。すぐ後ろは市の駐車場で1日1000円。そちらに車が入らないように手を振って「こっち、こっち!」と必死にアピールします。
日焼け防止の完全防備の小さな姿が風景に同化して、つい見落としてしまいそうになります。

手前にも地元の漁師さんが気まぐれに漁船置き場を臨時駐車場にすることがあります。
「テル子さ~ん、手前の駐車場300円だったよ~」と告げると
「あ、そうかい。」とお手製の段ボールに手書きのボードをくるりと裏返して「1日 300円!」に一瞬で変えます。
常に臨機応変です・・・・ちなみに私は最初に500円払ってしまいましたが、お年寄りに、まけて~とは言えません。

午前中の早い時間でも夕方でも、夏は毎日同じ場所にず~っと座って、草刈りに来たおじさんやご近所さんと世間話をしながら車が来るのを日がな待ち続けます。

駐車スペースと目にする車の台数から考えるとだいたい、平日3000円~週末で8000円が1日の売り上げでしょう。
自分の畑で採れた野菜も売っているのですが、木の箱に新聞紙と断熱材で完全に覆っているのでそこに野菜があるとはだれも思いもしません。しかもいつも他の話に夢中になってしまうので野菜を買っていく人は私ぐらいなもんです。
しかも、この売り上げ、全部お嫁さんに渡すそうです。

年金と貸している土地のちょっとした家賃で十分な暮らし。
長年の農作業で膝が痛くなったけど、風邪もひかず医者いらず。
1年中、休みはないけど、毎日やること盛りだくさん。
「テル子さん、なんか悩み事とかあるの?」
「昔はあったけど、そんなの忘れちゃったよ~あははは」


彼女はリタイヤという言葉を知りませんが、とても幸せなことだと思います。