『番頭劇場』・・・・・いわゆる番頭が勝手に妄想する、事実無根のフィクションがこのように呼ばれています。
私の数少ない友達に会った時の話しです。
友達Sがこんな話をしました・・・・・ある日、俺はふと気づいたんだよ。
「人生、思ったより終盤戦じゃないか?」って。
テレビで“終活特集”を見ながら、
冷蔵庫の中の賞味期限切れヨーグルトと目が合って、
同じく「そろそろ片付け時か…」と囁かれた気がして、
ついに俺は――終活セミナーに参加したわけ。
場所は市民センター第3会議室。
壁には「あなたらしい最期を考える」と書かれたポスター。
軽い気持ちで参加したが、会場の空気が…やけに重い。
講師:「まずはエンディングノートを書いてみましょう。誰に何を遺したいですか?」
S:「(あ、遺すものも残す人も…いなかったわ)」
そんなことを思っていたその時。
一つ隣の席で、聞き覚えのある声が――
「字、ちっちゃ。昔から変わってないね」
!!!!!
その声はまさかの――
元カノ・洋子。
大学時代、青春も煩悩も全部ぶつけた人。
別れてから30年以上会っていなかった、
心の奥の“アーカイブフォルダ”にしまってあった女性。
S:「……え? な、なんでここに!?」
洋子:「あんたこそ、なんで?」
あの頃よりちょっと丸くなった顔。
でも笑い方は変わっていない。
そして、俺の心の動揺も変わらない。
エンディングノートの「思い出の人」欄に、
つい“洋子”って書いてしまったのは――内緒だ。
休憩時間。
洋子:「今さ、ひとり暮らしなの?」
S:「うん。誰も監視してないから、毎日ダラダラ」
洋子:「私は…バツイチ。今は実家で母と二人暮らし。やっぱ老いはさみしいよね」
S:「……うん。俺、たぶん孤独死予定だったけど、今日なんか、ちょっと希望が見えたかも」
洋子:「まだ終活早いかもね」